中国残留孤児の父と言われる山本慈照を主人公とした、満蒙開拓団の逃避行と残留孤児探しを題材に、戦争の悲惨さ、国家的詐欺をテーマにした映画である。山田火砂子監督作品。
平日の午前の上映だから、閑古鳥が鳴いていると思っていったら、満席で補助イスまで出ていた。私よりも年上の観客が圧倒的であり、日中友好協会や民主団体からの宣伝が行き届いていると思われた。
映画の出来としては、正直、今イチという感想である。
満州を舞台にしているはずなのに、その大きさが伝わるような場面が全くない。ストーリーを「絵」(映像)で見せることをせずに、説明的になっており、展開をはしょったりしており、感動させるところが乏しい。
まあカネがないから中国ロケなど無理だったんだろうけど、せめて北海道ロケか当時のニュースフィルムの挿入とか、工夫できたんじゃないの?脚本ももう少し、練れたんじゃないかな。
子役が拙く学芸会を見させられている気になる。それと日中友好協会の長野県支部支部長のお坊さん役がワンシーンだけ出てくるが、あまりに下手くそなので、これは本物の坊さんがやっているのかなと思ったら、後でネットで見たら、ナント、日本人初のブンデスリーガ所属のサッカー選手だった奥寺康彦氏が登場していたのだった。あのね~。有名人を出せば良いってもんじゃないよ。失礼ながら滑舌は悪いし、見られたものではありません。
主役の内藤剛はよく演じているとは思うけど、お坊さん役なんだからお経はもうちょっと訓練してほしかったな。常盤貴子も、ただ「出てます」というだけでアピールするところなし。
ということで、映画の評価としては、ほんとに残念というほかありません。
ただ、今の日本が「積極的平和主義」の掛け声で、戦争も厭わずという空気になりつつあるときに、70年前の日本が、「東洋平和」「五族協和」の美名のもとに、中国侵略をし、それは日本という「国」だけでなく国民も加害者にさせられ、もちろん被害者にもなったという歴史をもう一度認識し、学ぶための映画として、存在価値はあると思います。