胎児に染色体異常がないかどうかを妊娠時に検査する方法としては、羊水検査が一般的だったが、高額である上、流産の危険もあるとされていた。これに対して新しく母体血検査が始まり、比較的簡単に高確率で異常の存否を診断できるとされている。
婚姻年齢が高くなり、妊婦も高齢出産が増え、出生率が少なくなっている中で、産まれる子どもが健康であってほしいと願うのは、もっともなことであろう。出生前診断をして陽性になった場合、妊娠中絶を選択する率が9割に上るという調査結果があったそうだ。これに対しては、生命倫理との関係で問題だ、障害児差別につながるとの意見もある。
確かに、健常児であれ障害児であれ、それぞれに生を受け、それぞれに個性を活かして幸福を追求するのが理想である。しかし、年間30万件にも及ぶとされる人口妊娠中絶の実態は、経済的問題が大部分を占めている。一方では、「妊活」という言葉が生まれるほど、不妊に悩み、妊娠するために苦しい治療を受けている人たちも多い。赤ちゃんが天からの授かり物という「自然」な状態で産まれてくるものばかりではないのが現実だ。
障害の蓋然性をかかえている胎児を産みたくないという妊婦の気持ちも否定することはできないし、手軽に検査ができるのであれば、やってみようと言う気になるだろう。