母は8年前の年末に逝った。
5人の子どもをかかえて、世渡り下手な父の下で生活は大変だった。
今なら少しでも収入を得ようと外に働きに出るところだろうけど、母は専業主婦を通した。
父に対する愚痴や不満もいっぱいあったに違いないのに、子どもたちには何も言わなかった。
学校から帰ってくると、いつも母が家にいたので、子ども心に安心感があった。
5人も子どもがいたからか、躾も厳しくはできなかったけれど、子どもたちはそれぞれ勝手な育ち方をした。
母は寒がりで、冬になると着ぶくれ状態で家事をしていた。
今のように蛇口からお湯が出るなんてことはなかったから、アカギレの指が痛々しかったのを思い出す。
幼いときは、すぐカゼをひき、熱を出したボクは、母の背に負われて、医者の下に何度も通った。
寒くなると、子どもの替えの下着をこたつで暖めておいてから着替えさせていた。
今のように丈が短く冬でもヘソが出そうなシャツなど、子どもには絶対着せなかった。
年を取ってからの楽しみは、父と近場の温泉めぐりをすることだったけど、足腰が弱ってきて、ひきこもり状態になってしまった。
5人の子の子育てだけで一生を終えたような母の人生だった。