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高畑アクセス法律事務所



早瀬圭一著「失われしもの」新潮文庫

 私が弁護士になったころ毎日新聞の夕刊に連載されていた事件のノンフィクション。
バーのママをしていた女性Mが、ホステスに同情してヒモのような男を殺害したが、その過程で、過去にガス死した夫についても、彼女が殺したということで起訴されたが、Mは夫は自殺だっただと主張する。
連載されていた頃は、1審で死刑判決が出て控訴審で争われていた時代である。裁判が進行している時に全国紙がこのような連載をすることは、めったにないことである。
 新聞連載を1冊の本にしたこともあってか、話しがあっちに飛び、こっちに飛びで、構成としては整理がついていないが、取材は丁寧であり、Mの息子や姉の話は胸を撃つ。
 物証のない中で、自他殺の判断は困難を極めるが、結局は死刑が維持され、Mはその後、再審請求も棄却され獄死した。
 Mが捜査段階で自白していたこと、夫に対する殺意をいったんは抱いて準備行為をしたこと、自殺を隠蔽するために偽装工作をしたのは不合理であることなど、Mに不利な点は多々ある。しかし、これで死刑にするのが妥当かどうか。結局、執行は躊躇され、肺炎で亡くなるまで獄に繋がれたままだった。
by accesstakabata | 2013-01-28 08:41
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