いま日本は、北方領土、尖閣諸島、竹島という領土問題を抱えている。この領土問題にかこつけて、時代閉塞の状況のウップンを晴らすために、反韓、嫌中といった排外主義が台頭している。
日本は、1945年にポツダム宣言を受諾して無条件降伏したのであるから、領土問題もこのポツダム宣言から出発する必要がある。そこには「日本の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれわれの決定する周辺小諸島に限定するものとする」と記載されている。日本の敗戦受諾の条件として、領土問題を第1次的には戦勝国の判断に委ねていることは記憶されるべきである。
そして、サンフランシスコ平和条約では、「朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」「台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。 」「千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」などと定められている。
これらの規程をどう解釈するかは、時代とその立場によって異なるものの、領土問題について、一方的に日本に理があるなどといえる ものではないことは明らかだ。
すでに戦後70年近くになろうとするいま、外交交渉による相互了解のないところで、実力行使によって、現状を変更する試みは許される筈もないことである。