今村昌平監督の傑作「にっぽん昆虫記」をビデオで観た。
東北の寒村で生まれた女性の本能的で生命力あふれた半生を敗戦から安保闘争の時代背景を織り込みながら描いた作品である。
貧しくて、教育もなく、知識や倫理観にも乏しく、性を売る仕事に堕ちていきながら、たくましく生きていく女性を左幸子が好演している。
今村監督は、決して主人公の生き方を賛美しているわけではないだろうが、今を生きる我々から観ると、人間の根源的な強さを訴えているように思われ、それにひきかえ現代人のひ弱さをあらためて感じさせる。
50年前の上映時には、これすら18禁映画だったというのも時代の流れだろう。