チリの映画なんて、たぶんはじめて観たのだろうな。
アジェンデ社会主義政権が、アメリカの後ろ盾によるピノチェト将軍の軍事クーデターにより倒され、以後、軍事独裁政権が続くチリ。ピノチェトは国際社会の信認を得る目的で、政権にYESかNOかを国民投票に問う。国営放送は政権賛美のオンパレードではあるが、YES派とNO派にそれぞれ1日15分の放送枠が与えられる。そんなことに精力を費やすのはピノチェトの画策する出来レースにつきあうだけだと無力感も広がる中、TV広告マンがコマーシャルの手法を取り入れて、国民に問い掛け、ついにNOを国民の多数派にしていくという、実話に基づいたドラマである。
映画としての出来は今一つという感じで、ピノチェト政権の背後にアメリカがいるということが全く描かれていないし、学生時代に歌った「ベンセレーモス」くらい出てくるかと思っていたら、それもなかった。
しかし、この映画は観る価値がある。一つは、政治に諦めは禁物ということ。どんなに強固にみえる政権でもそれが反国民的政策をとるものであれば、国民に対して訴えかけてこれを倒すことは可能だということ、もう一つは、国民への訴えかけの手法として、旧来の理屈や事実の積み重ねだけでは足りず、喜びたい、楽しみたいという感情に問いかけたことが成功するのだということ。
日本もこのままの趨勢で行けば、いずれ憲法改正にYESかNOかの国民投票が実施される状況になることも予想される。そんな事態になるまえにNOを多数派にしなくてはいけない。