法諺(ほうげん)という言葉をご存じでしょうか。
法律の格言とも言うべきもので、たとえば、「疑わしきは、被告人の利益に」とか「法は権利の上に眠る者を保護せず」などというように、もともとはローマ法等、旧い時代から成句として成立していたものです。
「目には目を、歯には歯を」という言葉があります。これは、ハムラビ法典にあるもので、「やられたらやり返せ」という応報思想の極端なものと、一般に理解されています。
しかし、これは応報にも限度があり、目をやられただけなのに感情にまかせて命まで奪ってはいけないという趣旨を含んでいます。応報の繰り返しがなされるのを防ぐ法意です。
小さなトラブルに遭ったとき、被害感情のみ肥大させ、過大な請求をすることにより、互いの感情がもつれて見境なく紛争が拡大していくこともあります。被害者だから加害者には何をしても、何を言ってもかまわないという雰囲気の人には、ちょっと待ってよと言いたくもなります。