60年前の産院で赤ちゃんの取り違えが起こった。
本来ならば、裕福な家庭の長男として生まれ育つはずだったその人は、
母子家庭の生活保護を受ける家庭の末子として育てられた。
それが還暦と言われる年になって、DNA鑑定の結果、生物学的な父母を知り、
その時には父母はすでに亡くなっていた。
私と同年代の人である。
そもそもDNA鑑定がこれだけ発達しなければ、実の父母にはたどりつけなかっただろう。
また、この人の場合、実母が、長男と他の兄弟があまりに似ていないので疑念を持ち、
兄弟たちが、母の死後、DNA鑑定を試みて取り違えを発見し、
さらに、調査会社に依頼をして、実の兄を探しだしたのだという。
実の兄弟はすべて私立大学を卒業。間違えられた家庭の子はすべて中卒。
学歴だけが、お金だけがすべてではないというものの、この格差は歴然としている。
60年前というと、産婆さんの介助による自宅出産から産院での出産に切り替わるころだし、
団塊の世代は過ぎたものの、出産件数も多かった時代だ。
産院もてんやわんやの忙しさだったのだろう。
それにしても60歳である。人生のやり直しは利かない。
取り返しがつかないミスである。
父母はすでに亡くなっているので、遺産分割も終わっているのだろうか。相続回復請求はできるのだろうか。
逆に、裕福な家に間違われて育った男性は、いまどんな思いでいるのだろうか。