夏休みを利用して、池袋の名画座「新文芸坐」に行ってきました。
目当ては熊井啓監督の「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」と「帝銀事件 死刑囚」の二本。
文芸坐は、映画ファンの中では有名な名画座で、一度閉館して、同じ場所で、パチンコ屋のマルハンの経営で再開されたという。池袋東口のいかがわしい路地の中にありました。
15日朝1番でいったつもりが、すでに長蛇の列。なんとか確保した席は一番前でクビを上げたままの映画鑑賞。二本立てを観た後はクビがいたくなっちゃった・・。旧い映画にこれだけの観客が来るとは東京はすごいと思うが、反面、観客の95%はシニア。若い人はほとんどいない。
「日本の熱い日々 謀殺下山事件」。
朝日新聞の記者で下山事件を追い続けた矢田喜美雄記者の著作をベースに、記者役を仲代達矢が演じている。
この映画は1981年の封切りだからカラーかと思ったら、モノクロである。1950年代を描くにはモノクロがふさわしいということだろう。
下山事件は自殺説と他殺説があり、自殺説は、解剖では慶応大学、マスコミでは毎日新聞、警察では警視庁第1課、他殺説は、解剖では東京大学、マスコミでは朝日新聞、警察では警視庁第二課と、見事に分かれ、最近になるまで諸説紛々の戦後最大のミステリである。
映画は、GHQの陰謀による他殺説を基軸に、実写や社会背景も織り交ぜながら、観客を引っ張ってゆく。
仲代達矢、山本圭がいい。あれ?浅茅陽子なんかが出ている。事実に基づいた映画だから、フィクションのように疑惑を解明できたというカタルシスは得られないが、占領期のニッポンを考えるために、観ておいて損はない映画である。
16日は「帝銀事件 死刑囚」。これは冤罪の疑いが強い平沢貞通の映画である。犯行の特殊性から七三一部隊など旧日本軍の防疫部隊の関与が疑われるのに、占領軍が七三一部隊の成果を独り占めするため、七三一部隊への追及を遮断したと言われる。新聞記者と被害者証人とのロマンスなど作り話だろうけど、これは映画としてもよくできていると思う。